大きな決断をしてもらいたい時。
そもそも相手が判断基準をよく分かっていないとすると、
決断してもらうこともできません。
このような時には、ヒューリスティックスの「係留と調整」
というスキルを使ってみてはいかがでしょうか。
目次
係留と調整は先手必勝
「ヒューリスティックス」というのは、
回答の精度は下がるが、回答に必要な時間が少ない思考方法のことです。
論理的というよりも感覚的なもので、
「ざっくり考えると、こんな感じかな」
と労力をかけない代わりに精度の低い思考をおこなう方法になります。
「ヒューリスティックス」には、いくつか種類があるのですが、
その中で「係留と調整」というものがあります。
これは、最初に与えられた情報(=係留)が、
その直後の意思決定に大きな影響を及ぼす(=調整)、というものです。
つまり、相手が明確な判断基準を持たない場合、
こちらから与えた情報を基に判断するようになります。
この効果を裏付けるものとして、
行動経済学のカーネマンとトベルスキーによって行われた実験を紹介します。
100名ほどの人々を2つのグループに分けて、
「国連に参加している国で、アフリカ諸国が占める全体の割合は?」
という質問をするのですが、2段階で答えてもらいます。
Aグループには、
「10%より多いか少ないか?」
を答えてもらってから、実際の割合を聞いたところ、
平均で25%となりました。
Bグループも同様に、
「65%より多いか少ないか?」
を答えてもらってから、実際の割合を聞いたところ、
平均で45%となりました。
「10%」や「65%」という数値が、
回答に影響を及ぼしたことを表しています。
これを利用したものに、二重価格表示などがあります。
元の値段を横線で打ち消し、値引き価格を記載するものです。
このように、基準値を先に示してしまうと、
その情報を基に考えてしまうようになるのです。
係留と調整の基本
「係留と調整」を使うにあたって、守るべきルールが2つあります。
1つ目は、十分な信頼関係を構築しておくことです。
「係留」とする基準を受け入れてもらう信頼関係が無ければ、
逆効果となってしまいます。
2つ目は、「係留」とする基準を先に出す事です。
相手から先に提示されてしまうと、
それが基準として「係留」してしまい、
その後の話は「調整」の段階に入ってしまいます。
「係留」は先手必勝です。
係留と調整の注意点
「係留と調整」が効きにくいタイプがあります。
それは、ヒューリスティックスが働きにくいタイプのことで、
合理的に考える人や、裏付けなどをしっかり取るようなタイプになります。
また、「係留と調整」が効きやすいタイプもいますが、
そういう人は後で不満を溜め易いタイプでもあるので、
信頼を裏切るような使い方は特にNGです。
まとめ
「係留と調整」は、相手が判断基準を持たない場合に、
特に有効なスキルになります。
十分な信頼関係を構築した上で、最後の一押しが必要な場合に、
ぜひ使ってみてください。
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